幽体離脱概論

一度だけ幽体離脱をしたことがある。

「一生に一度は幽体離脱してみたい!」

幽体離脱して友達に自慢したい!」

幽体離脱でハチャメチャにモテたい!」

そんな皆様のために幽体離脱する方法を紹介する。

 

【手順1:疲れる】

とにかく疲れることが肝要である。1日5時間踊り続ける、徹夜で図面を描き続けるくらい疲れるのが良い。

 

【手順2:寝る】

散々身体を痛めつけたら家に帰ってさっさと布団に入って寝る。

 

【手順3:金縛りに遭う】

ここが最大の運ゲー要素である。金縛りに遭わなければならない。金縛りとは頭より先に身体が眠ってシャットダウンしてしまった状態である。疲れているほど金縛りの発生確率は上昇する。

 

【手順4:脱力してから思い切り力を入れる】

身体が動かせなくなって息苦しさを感じ金縛り初心者はパニックになるかもしれない。でも大丈夫である。金縛りから抜け出せる方法は存在する。脱力してから急に力を入れるのである。僕は金縛りにかかったら、身体を左側に傾けるように意識してから思い切り身体を右に回転するようにしている。

 

...

 

するとどうだろう、いつものように金縛りを解こうとした僕は回転しようとする勢いが余り余ってベッドから転がってベッドの真横に立っていた。頭の中ではベッドの横で着地しているはずなのだが、どうやら身体はベッドの上で寝ているようである。実際は寝ているのだから重力は背中の方向に働く、しかし頭の中では立っていると認識しているので重力が垂直ではなく水平方向に働いているように感じる!

「な、なんだこれは!?」

どうしようどうしよう困った困ったどうしたものかどうしたものかとパニックになっているうちに、意識が身体に戻ってきて金縛りから解放されて無事に起き上がったのである。振り返ってベッドの上で寝ている自分の姿を一目見ればよかったと後悔している。

 

幽体離脱の正体は、実際の身体の位置と頭で認識している位置のズレによるものじゃないかと思っている。GPSがズレているようなものである。おそらく明晰夢の一種と思うが、今まで明晰夢を見たことがないので当時非常に驚いた。すぐさまWikipedia幽体離脱のページを見てみたが、体験者の約半数が金縛りにかかっていたらしい。僕の意識は短時間自室に留まっていただけだが、幽体離脱のプロは遠い場所まで行くことができるのだろうか。そうなると頭の中で認識している世界を動くのだから、どれだけ街のオブジェクトの配置を記憶しているかが大事になってくる。せっかく身体を放置して意識のみをえんやこらと動かしてやってきた街の風景が、記憶が薄いためにのっぺらぼうになっているのは味気ないように思う。

なんて不思議な体験をしたのだろう!翌日バイト先の塾で、いつも教えている女の子に「幽体離脱できちゃったわーい!」とはしゃいだが「ふーん」と興味なさげでショックを受けた。男の子は「すっげーーー!」と言っていたが。

 

あの日以来、幽体離脱を経験していない。そもそもここ2年間はほとんど金縛りに遭っておらず安眠できるはずなのだが、最近は普通の睡眠から遠ざかって不規則になっている。しかし、昨夜24時に寝て中途覚醒を2回くらいして8時半にバッチリ目覚めることができた。3週間ぶりの規則正しい睡眠である。僕の勝ちだ。意気揚々とフルグラを食べ薬を飲んだら急激な眠気に襲われお昼まで爆睡した。今日こそは勝ったと思ったのに!