文化の主戦場とギミック

渋谷系のような街の名を背負った音楽は、きゃりーぱみゅぱみゅ(原宿KAWAIIカルチャー)で最後になるのではないか。」

と学生時代漠然と思っていた。現在は女子高生たちが原宿竹下通りから新大久保イケメン通りへ民族大移動しているようだが、第4次韓流ブームは新大久保や大阪鶴橋の名を特に背負っている訳ではない。あちらは冬ソナ、少女時代・KARA、2NE1を経て元々あったコリアンタウンが再度フォーカスされている感じだろうか。アフターきゃりーぱみゅぱみゅとは言えないように思う。

また、ロックバンドがライブハウスで修行して徐々に売れていくというような流れ(KANA-BOON三国ヶ丘FUZZのような感じ?)ではなく、Awesome City Clubのように、CDをリリースせずに作った曲をYoutubeなどにアップロードすることで知名度を上げていくアーティストもかなり増えてきた。そういえば、ネットで音楽を聴く時代になり素早くインパクトを与えないと別のページに逃げられるようになってしまったため、イントロの時間も短くなりつつあるらしい。視聴スタイルの変化が音楽そのものに影響を与えているのである。冒頭12秒間炒飯を作っているだけの映像が流れるKANA-BOONの『ないものねだり』のようなMVも今後稀有になるのかもしれない(あれはあれでインパクトはあるが)。

ファッションについても同様である。代々木公園横の歩行者天国竹の子族、原宿や渋谷のカラス族、渋谷や池袋のガングロなど、ファッションは街を舞台に流行してきた。流行戦場は新大久保に移ったが、ZOZOTOWNなどネットで服が買えインフルエンサーの発信を通して商品を知れる今、現実空間である街・実店舗の立ち位置はどうなるのだろうとふと思う。

僕の漠然とした思いは言い換えるならば、

「音楽やファッションなどのカルチャのー主戦場がネット(仮想空間)に移動していくのではないか。その時、街(現実空間)の果たす役割は何なのか?」という疑問になる。

 

建築専攻のくせに建築士になる気がなかった当時の僕は、この疑問のヒントを得るため商業施設を運営している企業のインターンにガンガン応募した(こういう企業には不動産部があったりする)。インターンに参加してわかったのは、どの企業もAmazonZOZOTOWNなどのEコマースにボコボコにされないかビビり散らかしてるということである。

Eコマースに対してどう立ち向かうのか、各社様々な策を練っていた。とある企業の答えは「アジアへ大規模出店・進出し、覇権を勝ち取る」、つまり「ブルーオーシャンへ逃避行する」ということである。経営戦略上正しいのだろうが、日本という戦場から逃げている感じがする。「散々大規模なショッピングモール作っておいて後は放ったらかしかい!」と正直思った。そして僕自身海外に全く興味がなく、海外赴任なんて全くもって嫌である。僕の就活の進路からこの企業は外れた。

 

渋谷に旗艦店を持つ某企業のインターンも参加した。商業施設の周りにライブハウスやギャラリーなどのギミックを設置し、面的に街の価値を高めていくことが得意な企業である。一方で、ファッションブランドに重点を置いている以上やはりEコマースにビビっているようである。ただ、他の企業と違うのはEコマースの利便性と、実際に店に来て買い物するワクワク感を組み合わせられないかと模索している点であった。実際に来店してお気に入りの服を見つけてからネットショップで買う、インフルエンサーを起用して服を紹介するチャンネルを店舗をスタジオにして生配信するなどいろいろ策を練っているようである。逆風に対して自由な発想で試行錯誤する社風が良いなと思った。

グループワークもあるのだがテーマは「公園を作る」であった。商業施設の企業なのに公園を作るのである。当時渋谷駅前の宮下公園が再開発中であったためこのようなテーマになっていると思うのだが、当時渋谷店のリニューアルを計画していたことを踏まえると現実空間において熱狂する場を形成することの可能性を諦めていないように感じた。敷地や面積も特に定められておらず何でもありの自由である。他のグループは謎の直径100mくらいのドーナツ型の建物が空中にあったり温泉を作ったりしていた。いくらなんでも自由すぎるし渋谷の街に合っていないように感じた。渋谷である必要性がよくわからなかった。

僕のグループはよく覚えていないけどすり鉢地形の渋谷に合わせて、すり鉢型の形状の公園を作った。公園の真ん中で催されているファッションショーなどのイベントが周りから見えるようにして、歩いている周囲の人が「何あれ!?」と気になって公園に入っていくように、熱狂が増幅するようにした。同グループの経済学部の男の子の発案ですり鉢部分の地下に古着の図書館を設けた。古着を1枚持ってきたら、別の古着に交換できるシステムらしい。それを聞いて「あ、これだ!!」と思った。視聴者参加型のファッション文化形成、人々が主体的に関わりを持てるような劇場型のギミックがワクワク感や熱狂、一体感を生むんじゃないかと気づいた。そのような巻き込んでいくギミックをどんどん仕掛けていく、それが街という主戦場であり街の役割であるように感じた。僕らの妄想はどんどん膨らんでいき、制限時間3時間で公園の平面図や断面図、発表スライドだけでなく公園のかわいいアイコンまで完成し、結果めちゃんこ褒められた。他にもいろいろ考えていた気がするが忘れてしまった。ただ、グループワークであれほどの推進力が生じたことは後にも先にも無い。そしてグループワークを通して街の持つ役割を曲がりなりにも発見できたと思う。結局全く異なる業種の企業に入社したのだが、このインターンは本当に良い経験をだったと思う。

 

YOASOBIが今年の紅白に出演することが決まった。CDを1枚もリリースせずに出演という快挙である。そういう時代にもう突入しているのである。近所のTSUTAYAも軒並み閉店した。僕も今年買ったCDは今年解散したsora tob sakanaのベストアルバムのみである。(SAKA-SAMAのベストアルバムも買わなくては...)

そして、コロナ禍で商業施設は軒並み苦境に立たされている。「密ではない熱狂」というアンビバレントな目標を目指す必要がある。コロナ禍の現実空間でも機能する劇場型ギミックを、商業施設に限らず街に生きる僕たちは模索しなければならないと思う。

 

【都市の音楽あれこれ】

今夜はブギー・バック』で観るTOKYO CULTURE STORY

1976-2016の音楽・ファッション史。公開からもう4年も経っていることに驚き(ラストを飾るアーティストはブレイク前夜のあの方)。

 

アウトサイダー / Awesome City Club

「架空の街“Awesome City”のサウンドトラック」をテーマに、テン年代シティ・ポップを「RISOKYO」から「TOKYO」に向けて発信。

 

CD / ・・・・・・・・・

「東京の女の子」ではなく「女の子の東京」を目指したアイドルグループ。

https://finders.me/articles.php?id=134