音速の人

ここ最近は安定していると思っていたが、昨日の昼にふとしたことで将来が不安になり鬱へ急転直下しかけた。薄氷の上を歩いている感じ、操縦困難になる感じ。毛布にくるまって現実逃避していたが、なんとか思いとどまりリハビリがてら1時間ほど散歩した。スマホを見ずに道路、公園、木、池を見つめて歩いた。帰ってくると「まあ、なんとかなるわいな」と落ち着きを戻した。心の安定に散歩と自然は効くらしい。

 

昼寝して起きたら、近くに住んでいる大学時代からの友人のお誘いがあり久々に会った。

友人は夢を全く見ないらしい。僕は夢を毎日見る。モノクロの夢を見る人もいるらしいけど、人によってどうして違うのだろう。

今日も夢を見た。たくさん夢を見たけれど今日は最後に見た夢しか覚えてない。板尾創路とご飯を食べていたら、板尾が僕の茶碗に水を注いでお粥にされてしまった。夢の中でも板尾は無茶苦茶である。中途覚醒が多くお粥を食わされたが、目覚めた朝はめまいが控えめで落ち着いていた。今日なら元気に生活できそうな気がする。お正月は初詣に行けなかったので、この街で一番大きい神社まで歩くことにした。

 

いつも自転車で通る道も、よく見るとある特定の業種の会社が集積していたり違いに気づく。あまり通ったことのない道を歩いていたら、知らぬ間に怪しげな風俗街に来てしまった。朝からラブホテルに入る2人がいるのでワーオと思ってよく見ると、保守点検のおじさん2人だった。メンテナンスは大事だ。あとは文化財の山車を保存するデカいイナバ物置みたいな車庫が風俗街にあるのも驚いた。お祭りの時にウィーンと車庫の扉が開いて中から出てきた山車が毎年最初に目にするのは、向かいの店の看板のでかでかとした「快楽の楽園」の文字だと思うとなんだかシュールだった。

その後も街をすり抜けて歩いていくも、全く着く気配がない。思ったより距離がある。そして僕の歩くスピードが遅くなっている。

僕が小学生だった頃、Mちゃんというおとなしい同級生がいた。Mちゃんは走る速さは人並みなのだが、歩く時だけ異常に速い。下校スピードは校内トップクラスである。帰り道の通学路で前方にMちゃんを発見すると、みんなで速く歩いて追いつこうとするのだけど誰も勝てない。みんな競歩選手のようになっていった。中学生になると、凛として時雨が好きなMちゃんは大きなギターを背負ったロック少女になり歩みが遅くなった。高校生になったMちゃんはとうとう、彼氏の自転車の後ろに乗って毎朝高校へ運搬されるようになった。こうしてMちゃんが音速で歩く姿を誰も見なくなった。

 

Mちゃんとの競走で鍛えた脚力はどこへやら、1時間の散歩の予定が2時間になった。ようやく神社に到着して参拝。祈る僕もさすがに今年は必死である。でも、もう少し周りの方の安寧も祈るべきだったと少し後悔した。おみくじを引いてみる。吉。しかし、

「病気:軽く思うな」

と書いている。今でも十分重いわい。ただ、

「願望:努力すれば叶う」

と書いているのでどうにかなりそうな気がしてきた。病気に効きそうな「こころ守」を購入して自宅に帰る。

まだ正午。一眠りしてから久々に鍵盤に触れる。ギターを背負ったMちゃんを見て「うわーかっこいいじゃん!僕も弾いてみたいなあ!」と当時羨望の目で見ていた。僕が高校で楽器を始めたきっかけは、実は中学時代のMちゃんなのである。