MV学概論第3講 -低予算の逆襲-

【本講義の参考MVリスト】

https://youtube.com/playlist?list=PLO6M7qDxny1h6n6LXYFQAORDzpG0OL4Wz

皆さんこんにちは、MV学概論を始めます。第3講のテーマは「低予算の逆襲」になります。どう見ても安っぽい、だけどめちゃくちゃ面白い、そんなMVを集めました。ただ、ここ最近Youtubeで低予算MVを探し回っていたのですが、どうも最近は安っぽくて面白いMVが少なくなっているようです。ちょっと困りました。理由をいろいろ考えて以下を思いついたのですが、他にもあるかもしれません。

  1. MVの重要さに気づいてブレイク前のアーティストもそれなりに予算を割くようになった
  2. 最近流行っているTHE FIRST TAKEのような、余計な演出を入れずに歌う姿のみを撮ることを良しとするスタイルの発生
  3. ボカロ的アニメーションMVの増加(アニメーションMVは低コスト?コスト感が正直わからない)

この潮流は現在進行形であるため、もうしばらく時が経ってみないとはっきりとわからないのかなと思います。ただ、いつの時代もブレイク前のアーティストは予算がカツカツなはずです。ハイクオリティでユニークなMVを連発するサカナクションも、ブレイク前の『ナイトフィッシングイズグッド』では川で魚を釣る比較的地味な映像がMVとなっています。今回は3組プラス1曲を中心に紹介します。少し古めのMVが多いですが、低予算で印象に残るMVを早速見てみましょう。

ナイトフィッシングイズグッド / サカナクション


https://youtu.be/vg2cGSPb-mw

 

まずはタルトタタンというアイドルユニットの『プロ・デューサー』です。迷MVといえばタルトタタンです。

プロ・デューサー / タルトタタン


https://youtu.be/1jEQojZ98gc

画像と紙を次々に繰り出して風景の入れ子構造を作るアナログなMV、制作費はあまりかかってなさそう。ただ、労力はかかってそうですよね。コピー機をロケ地の河川敷まで持ってきて撮るたびに印刷しているのでしょうか。そうでないと、撮るたびにスタッフが近くのコンビニのコピー機に駆け込むことになります。謎です。ですが紙がグルグル回転したり巻き戻ったり、動きがあって見てて面白いですよね。この表現をデジタルで(お金をかけて)やろうとすると、例えばハナエの『神様の神様』や夜の本気ダンスの『Magical Feelin'』のようになります。ただ、デジタルだから優れているという訳ではなく、アナログでやってのけるからこそ独特の味とシュールが生まれたりします。是非比較してみてください。

神様の神様 / ハナエ


https://youtu.be/Bx0zOBY1big

Magical Feelin' / 夜の本気ダンス


https://youtu.be/HkaCCZa_Ob8

 

次も同じくタルトタタンの『これから』です。彼女たちはとうとうMVで顔を映さなくなり、ひたすら坊主めくりをしています。このMVを最後にタルトタタンは解散するのですが、なんと『これから』は10万再生を超えています。アイディア次第でどうとでもなります。坊主めくりと楽曲のほのぼの感が絶妙にマッチした良いMVです。

これから / タルトタタン


https://youtu.be/eOVeIb_icqk

 

次は、タルトタタン同様に数々の迷MVを生み出してきたバンド相対性理論の『ミス・パラレルワールド』です。夜の高速道路を走る車の全面展望を上下反転させたMVです。日常風景の反転というシンプルな手法がパラレルワールド感をもたらしています。似たような手法を用いたMVは結構多いのですが、今回は他にも3作品集めてきました。自然か都市か、現在か近未来かパラレルワールドか、MVによって表現したいイメージが異なります。capsuleの『WORLD OF FANTASY』が一番お金かかって派手ですが、サカナクションの『白波トップウォーター』も素朴で良いです。このように、同じ手法のMVをかき集めて見比べるのも面白いのではないかと思います。

ミス・パラレルワールド / 相対性理論


https://youtu.be/t2nTZrPQFFc

白波トップウォーター / サカナクション


https://youtu.be/5PEnwHKR3tc

Ray Of Light / deepsea drive machine


https://youtu.be/ZfO9gvCSADM

WORLD OF FANTASY / capsule


https://youtu.be/W4h8m74pyC8

 

相対性理論の他のMVも見てみましょう。『LOVEずっきゅん』は飛行機が離着陸する映像、『スカイライダーズ』は停まっている車の後ろからスモークを焚いて空を飛んでいるように見せる、どちらもシンプルなMVです。当時の相対性理論はメディアへの露出が極めて少なくバンドであり、このようなMVが逆にバンドの謎めいたイメージを生み出していました。ちなみに、有名ですが『LOVEずっきゅん』のMVには暗号が隠されています。暗号を解くのが今回の宿題です(ネットで調べれば答えは出てきます)。

LOVEずっきゅん / 相対性理論


https://youtu.be/nFG4oQE1Et8

スカイライダーズ / 相対性理論+渋谷慶一郎


https://youtu.be/Q3vhh9fe-S8

 

次は水曜日のカンパネラの『ブルータス』及び『マチルダ』です。どちらもブレイク前のMVなのですが、サイコロ・包帯で歌詞を視覚的に表現するのがユニークで、そんなにお金はかかってないはずなんですけど全く見劣りしないと思います。そして、ユニットのアイコンであるコムアイ(ボーカル)が前に浮き出るという点が非常に優れています。どちらも暗闇の中で撮っているのですが、余計な演出を全くしない引き算の美学のようなものがそこにはあります。その結果、非常にスマートな印象のMVとなっています。ゴテゴテの対極を突き進んでいたのがこの頃の水曜日のカンパネラになります。

ブルータス / 水曜日のカンパネラ


https://youtu.be/kRLmQ82U-z8

チルダ / 水曜日のカンパネラ


https://youtu.be/b16xlDXJ1UA

 

タルトタタン相対性理論水曜日のカンパネラの3組を中心に紹介してきました。ラスト1曲は大問題作、tofubeatsの『WHAT YOU GOT』です。とにかく見てみましょうか。

WHAT YOU GOT / tofubeats


https://youtu.be/JaOc5TBkjo4

このMVで何をやらかしたかというと、8,000円の動画素材を3本買ってそれを編集しただけなんです。たったそれだけでも面白い。人々に囲まれてひたすら両腕を動かして踊る男性。その動きがずっと繰り返されるのですが、最後の最後にそれが握手のモーションだったとわかる。序盤で鑑賞者に謎を植え付け、最後に全貌がわかる。全貌がわかるけれども結局あのモーションは何なんだと全く腑に落ちない。そこがまた面白い点です。また、Youtubeのコメントにもある通り、映像の周囲の白枠が凄く活きている。白枠を置くだけで何故かおしゃれになるのがいい意味で腹立つ点であります。これとは対極のtofubeatsの作品が後の回で登場しますので、お楽しみに。

 

今回は2010〜2016年の低予算MVを中心に紹介いたしました。予算が無くても、予算が無いからこそ面白いアイディアが炸裂するのを感じたかと思います。

最近の低予算MV情勢については、これから研究していかなければならない点です。直近のサブカルチャー史を取り扱ったような書籍が出れば研究しやすいのですが、先の見えないコロナ禍が落ち着くまでは現段階で出版するのは難しいのかなと思います。MV学概論もコロナ禍を通り過ぎて2020年付近を俯瞰できる頃に時点更新すれば良いのかなと考えています。

次回のテーマは「歪む時空間」。僕がMV研究を始めたきっかけとなる大事なMVが登場します、お楽しみに。本日は以上になります、ありがとうございました。