トラベル療法

お医者さんに旅行を提案されるとは露も思わなかった。どうしよう。

 

今の僕の状態を整理すると、朝は調子良い時、悪い時で波がある。めまいがあるものの外に出て散歩することが一応できる。鬱への急降下は直近1ヶ月で未遂が1回と極めて順調。不眠もしっかり改善し、朝は8時までに起きて1日のリズムが整いつつある。

先生によると次の目標は「数日間のリズムを維持する」だそうだ。そこで2泊3日程度の旅行が効いてくる。宿泊地だけ決めて、病気のことなんか忘れてゆるりと旅行するのがいいらしい。Go Toキャンペーンも無くなり、緊急事態宣言で観光客がいない今こそ旅行のチャンスだそうである。それはそうだと思うが本当に大丈夫?日記炎上しない?

とはいえ行きたい場所は山ほどある。雪深い秘境、静かな漁村、湯気立つ温泉郷、漫画の聖地。少し作戦を練るか。むむむ。

 

それはさておき、最近は読書に熱中する日々を送っている。今は柳田國男の『遠野物語』を読んでいるけれども、この作品には心を大きく動かすものがある。人身御供や祟りの話は心が痛み、妖怪・幽霊の話はゾッとし、笑い話は民衆が生き生きとして面白い。祠を足蹴にされて祟る神様、地蔵でソリごっこしている子どもを注意した爺さんを「せっかく子どもたちと遊んでいたのに」と逆に怒る神様、いろいろな神様がいる。実際に起こったかどうかは問題ではなく、そのストーリーが警告や戒めなど何らかの意味を持って口承で脈々と継がれているという事実が重要である。ストーリーが事実かどうかはさておき、ストーリーが存在するという事実が存在するのである。ややこしい。

「昔の話ってこんなに面白いの!」

僕にとって凄く新鮮な体験で、さらに柳田國男の『日本の祭』『日本の伝説』、上田秋成の『雨月物語』を先日購入した。『雨月物語』は恩師のおすすめで以前から読みたいと思っていた。3冊とも角川ソフィア文庫角川ソフィア文庫は古典を中心に学術・風習・民俗・伝記を軸とした文庫レーベルである。『伊勢物語』や『源氏物語』、『平家物語』など気になる古典文学が店の本棚に並んでいて目が輝いてしまった。角川ソフィア文庫ではないが、虫が好きなお姫様が登場する『堤中納言物語』も読みたい。が、とりあえず3冊で我慢。

雨月物語』は江戸時代の怪異小説であり、本文と現代語訳が掲載されている。本文でバチッと読みたいが古文単語・文法がうろ覚えである。助動詞む・べしの意味の語呂合わせ「すいかとめて・すいかかえて」のリズムしか覚えていない。どっちがどっちだっけ。高校時代の古典の授業はどうしても文法の暗号解読と感じてしまって、僕が理系だったこともあいまって勉強に手を抜き奥深くまで面白さを体感していなかった。近代以降の考え方・文化と対比することで見える古典文学の面白さ・価値に当時気づいていれば...日本史は大好きなのだが、こちらは事実の積み重ねが基本であり当時の人々の心情はほとんど表出しないので古典の勉強とは似て非なる。

今から学んでも全然遅くないだろう。そう思って今日は本屋で小西甚一の『古文の読解』『国文法ちかみち』を立ち読みした。とても面白そうだけど結構ボリュームがある。この量でちかみち、学問に王道無しを実感。今買うと絶対積ん読になる。そう考えて理性で衝動を抑えてとぼとぼ家に帰った。まずは柳田國男の3冊を読みつつ古典の勉強法を調べるか。

 

遠野も行ってみたいし、これからさらに古典文学を読み進めていくと日本全国津々浦々行きたい場所がどんどん増えていくだろう。物語の舞台を訪れてみたい。どこに行くか益々悩むぞこれは。けど、そもそも今旅行していいのか悩んでいる。