【本講義の参考MVリスト】
https://youtube.com/playlist?list=PLO6M7qDxny1gn7zKFEISdsjMwTpMNC9gQ
皆さんこんにちは、MV学概論を始めます。お待たせしました、気分が乗らず1ヶ月以上更新がストップしておりました。が、本日紹介する作品は大ボリュームの13作品です。映像という手法で私たちは時空間を歪ませ、従来抱いていたイメージをぶっ壊すことができます。そんな数々の代表作を集めてきましたのでどうぞお付き合いください。
まずは、サカナクションの『夜の踊り子』から見ていきましょう。実は、僕がMV研究を始めるきっかけとなった記念すべきMVです。ただ、本講義では3:59〜4:20の約20秒間のみに注目しますので、その部分は特にご注意ください。
夜の踊り子 / サカナクション
サカナクション - 夜の踊り子(MUSIC VIDEO) -BEST ALBUM「魚図鑑」(3/28release)- - YouTube
ラストサビで明らかに空間が歪んでいるのがおわかりいただけましたでしょうか。
1.女学生に徐々に近づくカメラ
2.ボーカルの山口一郎に徐々に近づくカメラ
3.女学生と山口が対面する姿を映すカメラ
これらのステップと通して、本来あったはずの女学生と山口間の距離が瞬時に消滅する。シンプルなトリックで空間を消滅させることができる一例です。
また、1と2のステップでは、私たちの視点とカメラが一体となって登場人物を主観的に追いかける。しかし、3のステップで女学生と山口の距離関係と関係を一気に詰めることで、冒頭から主観的に作品内へ没入していたはずの今までの私たちが一気に2人を客観的に見る視点へ放り込まれる。私が建築専攻だった時にこのMVを見て、距離感や時空間の歪み、関係性の変化を考えるきっかけになり、そして、ドツボにはまりました笑。そういったものを建築にするのは楽しいけれども非常に難しいのです。
次はカメラワークが特殊な作品を2つ紹介します。
Mobile / DATS
DATS - Mobile (Official Music Video) - YouTube
reiji no machi / パソコン音楽クラブ
パソコン音楽クラブ − reiji no machi - YouTube
DATSの『Mobile』は全天球カメラを用いて部屋の各アクティビティを映す作品(正直どうなってるのか僕もよくわからない点が多いです)。
パソコン音楽クラブの『reiji no machi』は弧を描きながら後退・前進するカメラワークによって、見慣れない不思議な視点で深夜の風景を映し出す作品。どちらの作品にも共通するのが「とにかくシームレスであること」。カメラなどの機材そのものの質の高まりとともに、撮影・編集スタッフの腕が光る作品です。
次は春ねむりの『春と修羅』。至ってシンプル。こういう空間の崩し方・化け方も面白いです。実は昨年のサカナクションのオンラインライブでも同様の演出を行っていました。エモーショナルな場面で効果的に空間を拡張する、それは意外とシンプルな方法でも可能です。
春と修羅 / 春ねむり
春ねむり「春と修羅」Music Video - YouTube
次は同時に複数視点を与えて広がりを持たせる作品を見ていきましょう。
ミュージック / サカナクション
サカナクション - ミュージック(MUSIC VIDEO) -BEST ALBUM「魚図鑑」(3/28release)- - YouTube
Peindre ou faire l'amour / メトロノリ
メトロノリ / Peindre ou faire l'amour / MUSIC VIDEO / from「伴侶」 - YouTube
The Cut -feat. RHYMESTER- / Base Ball Bear
Base Ball Bear - The Cut -feat. RHYMESTER- - YouTube
サカナクションの『ミュージック』は両側に全く異なる映像を据える構図が結構稀有じゃないかなと思います。1番、2番サビ前のボーカル山口一郎と少女の動きの緩急・温度差がありつつ、サビになると手が差し伸べられて2つの映像に一体感が生まれていく。そして、ラスサビへ加速していく。静かに向き合いインスピレーションが降りて創作へ向かっていく山口一郎本人の姿を上手く表現した作品です。
メトロノリの『Peindre ou faire l'amour 』、これは正直よくわからないですけど大好きな作品です。4つの視点が繋がるのか繋がらないのか非常に曖昧なまま緩く終わっていく感じ。
Base Ball Bearの『The Cut -feat. RHYMESTER-』は横にぶった切って2画面構成。BaseballとRHYMESTERのコラボ曲なんだけど、だんだんグループの垣根を越えてメンバーが混ざっていくように一発撮りで映すのが最高!片方のカメラがもう片方のカメラに映っていたりするのも面白いです。
バニラ / 蒼山幸子
蒼山幸子「バニラ」Music Video - YouTube
ロックバンドねごとの元メンバー蒼山幸子の『バニラ』、これは結構問題作であると思います。アニメーション作品なんですけど、実写で再現できるシーンが多いんですよね。逆に言えば、日常の風景をノンフィクションに解像度を落としてドットにする。意外と高度なことをしていると思います。
お次は変態技術の2作品。
やくしまるえつこ『放課後ディストラクション』360°MV / Yakushimaru Etsuko - AfterSchoolDi(e)stra(u)ction - YouTube
STORY (SXSW-MIX) / Perfume
Perfume Live at SXSW | STORY (SXSW-MIX) - YouTube
やくしまえるえつこの『放課後ディストラクション』は360°動画の作品。こういう作品が作れちゃう時代なんだなあと当時非常に驚きました。360°動画のMVが出る度、ヘッドセット欲しいなあといつも思います。没入感が違うんでしょうねえ。
PerfumeからはSTORY(SXSW-MIX)という伝説のライブ映像を持って参りました。大問題作です。2015年と少し古めの作品ですが、初めてこれを見られる方は何が起きているか全くわからないかと思います。ありえないカメラの動き方をしています。現実空間の概念は6年前に既に大崩壊しているのです。
会場全体の3Dデータ(仮想空間)を作り、現実のカメラが自由自在に移動したように見えるようバーチャルの力で補完するシステムを導入することで現実と仮想空間を自由自在に行き来できるシステムを構築しているのですが、説明が超難しいので、下記にトリックの詳細が説明されたインタビュー記事のリンクを載せておきます。是非。Perfumeのライブも行きましょう、是非。
https://www.google.com/amp/s/www.gizmodo.jp/amp/2015/12/perfume_sxsw.html
最後に、時間を操るMVを少しですが見てみましょう。逆再生で見慣れない非日常を映す作品をまずは2つ。
人生の針 / ゲスの極み乙女。
MUSIC / 南波志帆
MUSIC/南波志帆 (PV FULL) - YouTube
ゲスの極み乙女。の『人生の針』はラスサビの盛り上がりに向けて「逆再生」と「再生」、その切り替わり、緩急を付け方が非常に丁寧で上手いなと見てて思う作品です。また、背面のバンドメンバーが再生、手前の演者が逆再生というアンバランスさが序盤の不穏な印象を生み出しています。
南波志帆の『MUSIC』は「逆再生」のまま「再生」の日常を表現する作品。ホットドッグを食べてお腹いっぱいになる日常的なシーンを逆再生であえて撮る、逆再生の歪さを真っ向から撮る『人生の針』とは異なる面白さがあります。
そして、LAMAの『Parallel Sign』。矢継ぎ早に様々なモチーフが映し出されるMV、そのため他の講で紹介するか悩みましたが、あえてこの講で。見ていただきたいのは各サビの砂時計の表現。さりげないシーンですが、結構ドキッとしたかもしれないです。一部始終のうち始まりと終わりを示すことで、その間が私たちの想像力によって補完される。そういう時間の歪み方もあります。
Parallel Sign / LAMA
LAMA 『Parallel Sign』 - YouTube
かなり大ボリューミーでした!ご紹介したように私たちは映像を通して時空間を歪む・超越することができます。でも実は映像ではなくても時間を歪ませることは可能です。参考にラーメンズのコント『時間電話』のリンクを載せておきます。次回は第5講『モチーフの連射』!今のところ6作品しか集まっていないのでボリューム少ないかもです。本日は以上です、ありがとうございました!
時間電話 / ラーメンズ