フジモテキ・レポートⅡ

イベント現地に予定より2時間半も早く着いてしまったてきちゃん。重いキャリーケースを宿へゴロゴロ転がして部屋の鍵を受け取るのも面倒くさい。とはいえ、握力20kgちょいのもやしでド鬱の僕が設営に役立つともあまり考えられない。昨日見つけた恐竜に吹っ飛んだ鯉のぼりが絡まって、威厳のある宗教家みたいになっている。設営準備の邪魔にならないよう海岸に座って、帰りの電車で読もうと思っていた高野文子の漫画『絶対安全剃刀』を読み始めた。が、没頭してスイスイ読んであっという間に読了、他にすることが無くなった。結局、主催のアスケンに紛れ込んで準備を手伝うことにした。

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照明の配線、弁当ブースの値札貼り付け、机の運搬、めまいでのらりくらりしながらも意外とテキパキ身体が動く。良くも悪くもスイッチが入っている。僕が来ることをどうやら藤本さんが言いふらしていたようで、アスケンの方々からすぐにてきちゃんと認知されるようになった。ウルトラ人見知りなので心配だったが、杞憂だった。ありがとうございます、藤本さん。

 

そろそろイベントスタートの午前11時が近づき、フジモテキブースの設営についてブース配置の責任者っぽい方に聞きに行く。机はどこにありますかと聞くと、「はて?」とキョトンとした顔をされている。

あ、超、嫌な予感がする。

フジモテキに誘われた時、真っ先にブースの机のサイズについて藤本さんに聞いた。長さ180cmくらいの机が2段貸してもらえる、椅子も貸してくれると聞いていたがどうやらそれは別の物販ブースの話らしく、フリマブースは自前で用意しないといけなかったらしい。よし、藤本を海に突き落としてサバのエサにしてやる。

アスケンの方も事情をご理解いただき、大工さんの細長い作業板と土台を貸していただけることになった。本当に助かりました...!

 

よっこらしょと板を土台にのっけている時に藤本さん到着。あ、藤本さんの彼女さんもいる!ブースの背後にあるベビー海水浴場に突き落とせねえ。その代わりに、藤本さんを説教していただけませんかと彼女さんに懇願した。お願いします。本を並べようとするがこの日は強風、飛んでいきそうになる。夜に使うバーベキューブース(ドラム缶コンロが並んでいる)の近くに引っ越しさせていただき、強風から逃亡。やっとこさ本を並べていく。さらに、名古屋駅で買ってきた熊の人形なども置いていい感じにする。

 

フリマに参加するにあたって、本に一軍・二軍を付けたくないという思いがある。なので、基本的にはこのようなルールで本を今回選んだ。

①このフェスに置いてあったら変な、絶妙な違和感を覚えるような不思議な本

②その本の面白さをきちんと言葉で伝えられる本

③売る気はないが、みんなで見たら面白い本

 

板を半々に分けて、てきちゃんゾーンと藤本さんゾーンに分ける。藤本さんゾーンを覗くと、建築や農業などの真面目な本があるけれども、家の近所の怪獣マニアの店からゲットした昔の特撮絵本が10冊くらいあって特撮ゾーンができている(個人的には自然農の本がとても気になった)。他にはゲームボーイポケット、さらに錆びた包丁4つが置かれている。今は切れないが研げば使えるとのことで、これも売り物らしい(お客さんもこの包丁は上等だぁ...と仰っていた)。風で本が飛ばないように包丁を重しにしたりしていたが、以降の僕は、藤本さんが銃刀法違反等で警察に逮捕されないかヒヤヒヤしながら店を切り盛りすることになる。覗きに来た藤本さんの友達から「ガラクタ屋じゃねえか!?」と言われる始末。売れるのか、この店...

藤本さんがアスケンの設営に連れてかれそうになるが、必死に止める。藤本さんの本には値札がまだ付いていないので、今どっか行かれると売れた時に困る。半ば脅して値札を付けろと説得。引き止める。

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オープンし、ちらほらお客さんがやってくる。驚いたことに、持ってきたリトルプレス版てきちゃん漂流日記が飛ぶように売れたのである。3冊持ってきたが、オープン早々に建築・インテリアの本を探し求めてやってきた方が「何これ作ったの!?いいじゃん!?」と仰ってご購入。すぐに別の方も「面白いじゃん!!!!」とご購入いただいた。しかも、どうやら近くの芝生で読んでいたようで、しばらくしてからフジモテキブースに駆けつけ「めっっっっちゃ面白いねんけど何なんこの本!?」とご感想をいただき感無量(シュールで投げやりな感じがめちゃめちゃ良いとのことでした)。本当に嬉しくてマジで涙が出そうになる。残り1冊。元々買いたいと仰っていた藤本さんの彼女さんが慌ててご購入。誇張抜きに、瞬く間に売り切れた。もっっっっっっっっと製本して持ってこれば良かった!!30冊くらいあっても普通に売れてたわ。次回フジモテキへの反省点。

お昼過ぎ、てきちゃん漂流日記が既に売り切れ。多幸感、ドーパミンドバドバ。最近の僕を覆いつくしていた心の暗雲が全部吹き飛ぶ。自分が面白いと思ったものは面白い!!自分のスタイルに自信を持つ。1か月ほど続いていた断酒を一時中断することをここに宣言!氷結を飲みながら接客し始める!!

 

酒を飲んで饒舌になったてきちゃんに本を喋らせたら止まらない。お客さんにどんどん推しポイントを伝えていく。楽しい。今回はもう僕には必要ないかと思った「死」に関する本を3冊持ってきた。これらを比較しながら説明すると、「じゃあ私この本が向いてるかも!」と買っていただいたり。楽しい~~~!氷結おかわり!!!

 

僕と藤本さんで研究室時代から収集している『岩波写真文庫』も今回は持ってきた。岩波書店が1950年代に出版していたテーマ別写真集シリーズ。写真は全てモノクロ。図鑑のような子供向けの解説書が、大人向けになったような渋い本。ジャンルは様々、僕が持ってきたものだと『レンズ』『波』から『東海道五十三次』『写楽』、『鵜飼の話』まである。そして、文と写真が本当に、気持ちいいくらいにかっこいい。『波』では物理学における波、脳波など様々な波を多角的に取り扱っているが、とあるページに8分割の構図で時間帯別の都心の交差点の様子が写されている。歩行者がまばらだったり、群れていたり。そのページのタイトルは『人の波』。もうたまらなく演出がかっこいい。『レンズ』を買ったアスケンのハヤシくんが僕たちの後ろの椅子に座って読んでいたが、読み終わったら『波』もおかわりして読んでいた。岩波写真文庫は全部で286巻、ジュンク堂で復刻版が売っていたりするが、種類は少なめ。見つけたら買うべきです。

岩波写真文庫 - Wikipedia

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お手洗いから帰ってくると、大工のにいちゃんが僕のヴィレヴァン×ゾッキコラボのサングラスをつけている。聞くと、漫画『ゾッキ』の作者である大橋裕之さんと飲んだことがあるとのことで、大変びっくり。竹中直人監督の映画『ゾッキ』は4月2日公開。見に行かなくちゃ。持ってきた1万円の原宿ファッション写真集『FRESHFRUiTS』にみんな釘付けになる。「ナニコレ!?」の連発、しめしめ。藤本さんのゲームボーイポケットもおにいさんたちが「懐かしっ!?」と叫びまくる。

「櫓龍」のタオルを持ったおねえさんがフジモテキブースにちょくちょくやってくる。気になって調べたところ、コンビニなどで市販されている玩具花火だけを駆使して創作花火大会を行っている花火師集団らしい。ヤバすぎる。カタカナで「ヤグラドラゴン」と書かれたタオルを僕もおねえさんから購入する。頭に巻いて接客していたら、つけてるじゃんありがとう!と記念撮影。パシャリパシャリ。

 

夕方、背後のバーベキューブースのコンロに火がつく。このまま本が燻製になってしまうのではと大ピンチ。全イベントが終了したイベントゾーンに引っ越す。転々と移動するゲリラ古書店フジモテキ。櫓の真下に3面のテーブル、最強の一等地をゲット。ありがとうございます...

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藤本さんゾーンから『ももクロを聴け!』を個人的に購入。研究室時代からこの本はヤバいと噂には聞いていた。曲・歌詞が伏線となって絡まりながら、ももクロの歴史を解き明かす名著らしい。全134曲完全解説。『ミライボウル』『Z女戦争』あたりは聴いていたけど、新しいのはあまり聴いていなかったので勉強する必要がある。

藤本さんの師匠(建築家・大学の先生)がお越しになられる。てきちゃんゾーンから2冊ご購入、その後おかわりで4冊ご購入。特につげ義春3冊セットが売れたのが嬉しい。「いい選書だ...!」と仰っていただき誠に光栄です...師匠の教え子さんもいらっしゃり、漫画などがどんどん売れて、饒舌な僕もペラペラしゃべりまくる。結果、氷結を4杯飲んでいた!!

暗くなって閉店。片付けている間にアイリッシュ音楽の演奏が始まったので大集合。ハイボールを飲みながらゆらゆらとする。大学生のIちゃんに謎の酒を渡される。アルコール度数10%らしい、飲んだ、やられた、二日酔い確定の味がした。その後も芝生に座ってゆらゆらしていたが、藤本さんたちが寝るテントを作ることになる。酔っているのでなんのこっちゃわからない。大学生のフレッシュな面々も大集合、みんなで取扱説明書を見ながらやっとこさ完成。アイリッシュ音楽の演奏が終わり、今度はギターにディレイとリバーブを強烈にかけたヤバいミニマル・ミュージックの演奏が公園中に響き渡る。音感ないけどこの音なら僕の持っているロシアの電子楽器「LYRA-8」でも鳴りそうな気がする。でも、この楽器は30分動かして、心にグッとくる音が鳴る瞬間が20秒ほどしかないほど操作が難しい。人前で弾くのはなかなか気が引ける...

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僕は体調が心配だったので、テントではなく宿へ。翌朝、Iちゃんドリンクのせいでやはり二日酔い、しばき。雨が降っており、予定されていたビーチクリーンは中止。チェックアウトしてイベントの撤収作業をお手伝い。ホテルで手配した帰りのタクシーがやってくる頃に、なぜか芝生で綱引きが始まった。2戦目に僕も参加して引っ張った。向こうのチームに体格のいい方がいて、こっちのチームは小柄な人だらけ。団結力が大事だ!ということで「よいしょ!よいしょ!」の掛け声で引っ張ったら勝った。勝ってわーいと喜びながら、それじゃありがとうございましたと挨拶して名古屋に帰った。半分近くの本が売れて、帰りのキャリーケースはだいぶ軽くなっていた。

 

 

初のフリマ出店でした。かなり不安でしたが、意外と結構なんとかなりました。臨機応変にご対応いただき、さらにめちゃくちゃ仲良くしていただきまして、アスケン並びに関係者の皆様本当にありがとうございました。藤本さんの彼女さんもめちゃめちゃ準備・店番など手伝っていただき、そしてたくさん写真を撮っていただき本当にありがとうございました。藤本さんはありがとうと海に沈めるぞの半々です。

そしてご購入いただいた皆様、本当にありがとうございました。

感想ですが、まずは「自分が面白いと思ったものに共感する人は絶対にいる」こと。これを非常に痛感しました。そして、それは本当にありがたいことであることを。もっと自分の感性を信じてよいというか。ただ、自分でちゃんと面白いと思うポイントを言語化・構築して説明できること、そして見せ方・演出の工夫の存在が前提となりますが。

そして2つ目、「売れた本が全てではない」こと。売れていなくても関心を大いに引いた本はたくさんありました。見た人の心に爪痕を残す、それだけで立派な大仕事だと思います。錆びた包丁もインパクトあるけど、どうなんでしょう...笑

3冊しか持ってきてなかったですが、日記が爆速で売れたという事実は、これからの僕にとって非常に大きな出来事になるなと思います。自分の人生・スタイルへの確信のような、「これでいいんだ」って感じが見えました。スモールステップで未だ見ぬ面白さへ歩いていきたいなと思います。

一方で、やっぱり双極性障害知名度はかなり低い、それも感じています。躁鬱と聞いてなんとなくイメージはつくが、それはどちらかというと支離滅裂な傾向のⅠ型のほうで、僕のような外見からは全くわからないⅡ型は本当に知られていない。だから、書いて、製本して、お店に立ったりして、伝えていきたいと改めて考えています。

 

めまいを忘れてしまうほどのワクワク感を常に持ち続けたい、そしてワクワク感を共有して未来へ繋がっていく場を僕(たち)は欲している、そう思いました。

 

~てきちゃん選書リスト~

【建築】

practically minimal / maggie toy

MINIMAL STYLE / Angelica Taschen

Build the Future / 西澤丞

世界がうらやむニッポンのモダニズム建築 / 米山勇、伊藤隆

 

【小説】

新釈 走れメロス / 森見登美彦

平成くん、さようなら / 古市憲寿

 

【文芸】

もし文豪たちが現代の文房具を試しに使ってみたら / 福島槙子、寺井広樹

 

【ファッション】

FRESHFRUiTS / 青木正

 

【漫画】

ロスト・ワールド 全3巻 / 手塚治虫

浪費図鑑 / 劇団雌猫、朝陽昇

夜の太鼓 / 山川直人

女には向かない職業 全2巻 / いしいひさいち

インターウォール interw@// / 佐々木充彦

国民クイズ 上下巻 / 杉元伶一加藤伸吉 

ベルリンうわの空 / 香山哲

マチキネマ 全2巻 / サメマチオ

COCOON / 今日マチ子

DOG MAN / Dav Pilkey

桜の森の満開の下 / 近藤ようこ

しりあがり寿の死後の世界 / しりあがり寿

アイスバーン / 西村ツチカ

セリー / 森泉岳土

トラベル / 横山裕一

この町ではひとり / 山本さほ

 

【科学】

鏡の中の物理学 / 朝永振一郎

ノヴァセン / ジェームズ・ラヴロック

 

【社会・人文】

エビと日本人 全2巻 / 村井吉敬

DEATH / シェリー・ケーガン

死にカタログ / 寄藤文平

思考の整理学 / 外山滋比古

アイディアのレッスン / 外山滋比古

地下アイドルの法律相談 / 深井剛志、姫乃たま、西島大介

 

【旅行】

リアリズムの宿 / つげ義春

貧困旅行記 / つげ義春

つげ義春の温泉 / つげ義春

 

岩波写真文庫

レンズ

桂離宮と修学院

鵜飼の話

東海道五十三次

写楽

東京国立博物館

 

【日記】

てきちゃん漂流日記