アスフェス・レポートⅠ

26日の火曜日、パソコンの画面をじっくりと見る。両サイドに並べて情報を見比べる。腕を組みながらどれにしようかと悩む。こちらはどうやらバランス型。あちらはどうもピーキー型。2人が合体しないかな。ゲームだったら簡単だけど、現実はそういう訳にはいかない。

 

高浜町USFESの移動日と衆院選の投票日がどちらも31日とかぶっている。期日前投票をするために、各党・議員の打ち出すマニフェストなどを確認する。一通りチェックして投票先を決定し、27日に投票した。予め小手川正二郎の『現実を解きほぐすための哲学』、綿野恵太『みんな政治でバカになる』を手に入れたのだが、読むスピードが遅くて衆院選に間に合わなかった。

 

28日は心療内科、いつもどおり。家に帰って本をキャリーケースに詰め込んでいく。木箱などの重い雑貨類は前もって高浜の「はもと加工販売所」さんに送って置かせていただけることになったので、前回のUSFESに比べて手荷物は軽いはず。そう思っていたのだが、漂流日記をたくさん入れたり、大型本を詰め込んでいくと、結局凄まじい重さのキャリーケースがお目覚めになる。

 

29日の金曜日、名古屋駅から特急しらさぎに乗って本を密輸する。前回は進行方向左側に座ったが、今回は右側。大垣駅を過ぎて風景に目を凝らすと、どんどん金生山が迫ってくる。この山は石灰石の一大生産地で、山の大部分が吹き飛んだかのような形状をしている。新幹線に乗って頻繁に出張していた頃、あの山は奇妙奇天烈な形をしているなと思っていたが、ついに間近で見ることができて嬉しくなる。

 

福井県に入り敦賀駅で1時間ほどの乗換待ち。改札を出て売店で鯖寿司を買って食べる。前回USFESの日記にも書いたとおり、鯖寿司が大好物である。スシローでも鯖寿司を絶対に注文する。ちなみに今回、復路でもこの鯖寿司を食べた。その時の乗換時間は10分。早歩きで慌てながら購入して無事に乗車。食い意地だけはいっちょまえである。時間内にダンジョン最奥部の鍵を手に入れ、スタート地点まで駆け抜けるゲーム『ワリオランドアドバンス』を思い出す。小学生の頃、親友から借りてよく遊んだな。

 

藤本さんからLINEが届く。

「会場で設営手伝って♡」とのこと。『HUNTER×HUNTER』のヒソカか。高浜到着後に酒を飲みまくろうとしていた僕のシークレットプランに暗雲が立ち込める。鈍行列車に乗りながら、やっぱり1度は藤本さんを海に突き落とした方がいいんじゃないかと思い始める。僕をUSFES主催者である高濱明日研究所のメンバーであると彼は勘違いしている可能性が高い。

敦賀駅から90分、若狭高浜駅に到着する。相変わらずエレベーターが設置されていない。泣きべそをかきながら持ち上げる。耐えるか耐えないか非常に微妙でギリギリアウトな負荷。前回は駅員さんにお願いして階段横に設けられた車椅子用斜行エレベーターを使用したのだが、そのことを申し訳なく思い続けている。手に汗かきながら少しずつ昇り、少しずつ降り、必死で対岸に着く。

 

駅前にデデンと新しい看板が立っている。シーフードマーケット「UMIKARA」が今年7月にオープンした。実は、藤本さんがUMIKARAの設計に携わっている。LINEを見ると、USFES設営準備のお礼に藤本さんによる全館案内ツアーをしてくれるとのこと。海鮮丼をおごってもらおう。
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インスタのストーリーを見ると、藤本さんは2時間前に高浜に到着したようだ。藤本さんの写真と同じ場所で僕も撮って、ストーリーに投稿する。ちなみに、この日にフジモテキイグチのインスタの投稿数は50になった。このアカウントではおすすめ本の紹介をしているが、記念すべき50投稿目は藤本さんの『シャーマン』であった。これまた濃い本を持ってきたな。画面をスライドして過去の投稿を眺める。偏っている訳ではないのだけど、どこか尖った本が並んでいる。ちびっ子が見たら泣くと思う。そのままスマホをチェックすると、イベント出店依頼のメールが届いている。とりあえずフジモテキイグチLINEに共有する。

 

スマホをポケットにしまい込んで、北へしばらく歩くと海が広がる。半年ぶりの日本海。ゲリラ古書店フジモテキイグチはここから始まったのである。
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会場横のホテルにチェックインして荷物を置く。城山公園に着くとえっさほっさと作業が進んでいる。藤本さんたちと合流し、僕も参加する。椅子や机を組み立てて運んだり、販売ブースの設営、電飾の配置、タープの組み立て、いろいろやる。いろいろやるのだが、どうも前回と配置が違うようで、どこに何があるのか頭に全然入っていない。予め藤本さんから配置図を拝借するべきだったと少し後悔しながら働く。

 

物を持ち上げて運ぶことを繰り返し、次第に違和感を覚える。同じ物を持っている他の方を観察する。どうも、僕は物の持ち方を忘れてしまったようなのである。物の重心と自分の身体の合わせ方を忘れてしまっていて、身体に負荷のかかる非効率な運び方をしている。引きずるように持つ。

ON READINGさんで手に入れた『整体対話読本 ある』を最近読んでいる。この本の第1章が「働く」である。「身体」、「整体」、「気」などではなく、意外にも。曰く、働くことと運動は同一であるらしい。ひっくり返せば、働いていないと身体を動かしていないといえる。療養生活の副作用が如実に現れている。早く働かなくちゃと思い始める。

 

夕方に見た出店依頼のメール、申込み締切が記載されていない。明日はイベント当日で忙しいので返信できないに違いない。藤本さんに伝えて、念のため一旦ホテルの部屋に戻って対応する。畳に座って1人、どういうアプローチで考えるべきか思案する。確認事項など整理して返信する。

出店するかどうかまだ決まっていない。ただ言えるのは、このイベントに向けて僕の休職期間に起こった出来事の整理、再構築をする必要があること。それはおそらく辛いもので、なおかつ孤独な性質を抱えていること。しばらく深く潜っていく時間を必要とする。これからは身を削る危険な期間になりそうな気がする。

関連する専門知識を持っている友人たちに連絡して相談する。ありがたいことに快諾していただき、体制が整う。とりあえず僕の方でノートに整理した上で、Zoomなどで話し合うのだと思う。

現時点でやるべきことはやった。考え込んでも身体に毒である。外に出て、お手伝いして、身体を動かそう。このイベントが一体何なのかは、また今度に。

 

それからお手伝いしていると、はもと加工販売所さんに行って藤本さんたちのサポートをするよう指示が入る。販売所に行くと、社長の名里さんと藤本さんがパソコンをチャカポコ叩いている。注意事項や食べもの・グッズの値段などを示した看板を作っているらしい。パソコンからコピー機へデータが出力され、ガガガと出てきた紙をラミネートフィルムに挟んで、機械で圧着させていく。僕はフィルムで挟む担当。コピー機に負けないようパパっと挟んでいく。身体を動かしている気があまりしないが、これも働くということなのだろう。

あまり夜遅くまで起きているとリズムが崩れるので、一足お先に撤収する。夜の海沿いを、身体とは、働くとはと考えながらホテルへ歩いていく。大浴場の開いている時間を勘違いしていた、今日はもう入れない。明朝、湯船から穏やかな海を眺めよう。