すき焼きと早起き

年末年始は地元大阪に帰省することにした。何食べたいと母に聞かれ、大好物であるすき焼きと即答する。お肉もねぎもたんと食べたい。そうと決まれば頭の中はすき焼きパラダイス。年末年始が待ち遠しくなる。

ある日、晩ごはんに餃子を一人むしゃむしゃ食べていると、ふいに感じる。

「すき焼き食べたいな......」

郷愁みたいな寂しさがすきま風のようにひゅっと流れていくのがはっきりわかる。気づかぬ間にこっそり今までと異なる感情が忍び込もうとしている。躁の僕か、それとも鬱の僕か。どっちに共感できるか心に問うと、やっぱり少々鬱のほうに傾いている。あまり深く考えずにストレッチをして早く寝ることにした。寝てしまえばこっちのもんだ。

 

このように、ささいなことから肌感覚で感情の推移がわかるようになってしまった。この成長っぷりは結構凄いことなのではないかと僕自身思う。最近は東京での出店に向けて、ブースに設けるプレゼンボードを作るなど忙しい日々を送っているが、22時になると深追いせずにパソコンを閉じて作業を終えるようになった。引き際をわきまえ始めている。そして、無印良品のおやすみアロマをぶちまけて眠る。このアロマが驚くほど効き、不眠からは長らく遠ざかっている。

 

1ヶ月ぶりの産業医面談で告げられる。自己分析できているので躁鬱については全く心配していないと。ただ、最近治まっているといえども、めまいだけはやっぱり怖いとのこと。もう少し様子見するみたい。

しかし、社会復帰へと着実に近づいているのは間違いない。そこで、新たなステップとしてお医者さんからミッションが与えられる。

 

朝6時半起床、夜23時就寝の生活リズムを作る。

 

無理である。

そんな生活、中学時代を最後に一切したことがない。働いていた頃だって職住近接ライフを謳歌していたもんだから毎日8時に起きていた。この時間に起きることができれば復職しても転職してもバッチコイらしいが、果たしてできるのだろうか。

無理無理言っても仕方ない、とりあえずやってみる。スマートウォッチでアラーム設定して就寝。6時半に左手首が震え出すのでアラームを解除する。寒い、もう少し寝る。7時にベッドから出る。

特に予定もないんだから、早朝に起きるなんてできっこない。7時や7時半に起きているだけでも十分偉い。そう自分を元気づけるが、何遍もチャレンジしても6時半に起きられない。

 

でも、明日だけは起きる自信がある。ポケモンの新作発売日だから。

ダウンロード版は日付が変わった瞬間に遊ぶことができるけど、徹夜をすると整いだした生活リズムが瞬く間に崩壊するので、今日は早く寝ることにする。その代わり、明日は6時半に起きて朝からポケモンしようと思う。一日中ポケモンしようと思う。そのためにレッドブルも買ってきた。明日22時にAボタンを押す指をピタリと止められるか、それだけが心配である。