そもそもケアってなんだろう(4)

【3ヶ月前の内容です、やっと書けた...(遅いわ!)】

 

11月27日の早朝、カプセルホテルで目を覚ます。歯磨きや着替えをして、エントランスで預けていた荷物を受け取る。

ホテルのある歌舞伎町から小田急新宿駅まで荷物を運ぶ。キャリーケースのタイヤが摩耗したのか転がらなくなっている。引きずって運ぶ。

小田急の各駅停車に乗る。代々木八幡に停車して、ここがテンテンコの楽曲『Good bye, Good girl.』に出てくる街かと頭の中で繋がる。15分ほどで世田谷代田駅


Good bye, Good girl. - song by TENTENKO | Spotify

 

コンビニで買い物しようとBONUS TRACKとは反対の西口から出ると、目の前はだだっ広い下り坂になっている。地下を走っていた小田急が眼下で顔を出して、その線が西へびよんと伸びる。ここはかなり標高が高いようだ。目線を上げると緑色の山々が壁のように連なっていて、その奥から富士山がぴょこんと顔を出している。いろいろな要素が混じり合って不思議だけれども、どこかほのぼのとする風景だった。

買い物をしてから東の遊歩道を進む。荷物が重すぎて既に腕が限界を迎えている。ただ、下北沢から来るよりも平坦な道で良かった。下北沢で降りていたらと思うとゾッとする。


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BONUS TRACKに到着するが早すぎたみたいだ。ベンチに座って本を読む。今日は風が強い、本が飛ばないように注意せねば。運営の方を発見して挨拶する。僕たちのブースの位置は、飲食店などに囲まれたBONUS TRACK内の広場。ピンと張った屋根に電飾がついていて、夜になったらキラキラしてそうだ。

赤いキャリーケースを転がした藤本さんが到着。早速本を並べていく。互いにキャリーケースを開けてボリューム感を確認する。気合いを入れすぎて双方とんでもない量の本を持ってきてしまった。

 

今回、藤本さんはキャリーケースに発泡スチロールを突っ込んだ「冷蔵庫」という名前の陳列棚を開発した。これに装丁のインパクトが強い本を面で並べる。印刷屋さんでオーダーしたボードも開封する。いつもよりリッチなラミネート加工、いい感じ。漂流日記説明ボードの上には漂流日記を置く。手書きノートZINE『そもそもケアってなんだろう?』なども置いていく。出没マップは木製スタンドに立てかける。木箱などを用いてディスプレイに高低差・遠近感をつけていく。場数を踏み続けた結果ますますカオスになってきた。そろそろオリジナルの棚も作ってみたいと思ったりする。


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12時、イベントスタート。最初に現れたお客さんがまさかの会社の後輩で驚く。早稲田出身の彼女は、藤本さんが持ってきた早稲田学報に食いつく。雑誌としてのクオリティが毎号高いのだが、学生には無料で配布されるらしい。恐るべし。近況など話して彼女は昼ごはんを食べにお店に入っていった。

若い3人組のお客さんが登場。いろいろ喋っていて最後の最後に漁村研究室の方々と判明。奥からいつもの漁村ポストカードを取り出してお見せすると大盛り上がり。漁村を愛する人々は実は結構存在する。

昨日一緒にサムギョプサルを食べた会社の先輩が現れる。フジモテキイグチ名物のとある1冊に食いつく。藤本邸から出土した1970年の大阪万博パビリオンスタンプラリー。左面にはパビリオンの写真、右側にスタンプを捺す空白。なんと全てのスタンプが捺されている。手に取る人は多いものの結構な値段をつけていたので誰も今まで買わなかった。それを今、先輩が買うと宣言する。藤本さんが嬉しさと寂しさの混ざったような顔をしている。僕たちは出会いと別れの古書店である。

 

それから大変なことになる。高校や大学の同級生たちが続々と現れて、同窓会のようになる。中にはお菓子をくださったり、半ば病院の見舞いのようにもなる。それからは、てんやわんやしてあまり覚えていない。しかし、その熱狂の渦の中で生存確認を受けていく中で、とても楽しかったこと、ホッとしたことは覚えている。

 

裏道編集部のなはさんが現れる。御茶ノ水のPARK GALLERYさんで開催されたイベント「COLLECTIVE 2021」に本をお互い出展していて、ちょくちょくやり取りしていた。なはさんとれおにーさんの制作した『裏道』、めっちゃ良いんです。ついに出会えた!

あれこれ会話するのであるが、なはさんに「てきちゃんさんって思ったより喋るんですね...」とびっくりされる。僕だって喋るもんね、お酒入ってたけど。

向かいのブースにいらっしゃるコミックエッセイストのハラユキさん、隣でお手伝いしているかわむらさん、今日の出店を僕たちに依頼したとみたさん、実は全員なはさんのお友達だと発覚し驚く。点が全て線で繋がったように感じる。彼女たちは高円寺によく出没するらしい。就活の頃によく中野や高円寺のネカフェに潜伏していたので、あの街はなんとなく覚えている。高円寺トークで盛り上がる、懐かしくなる。

ハラユキさんの著書をお迎えしたり、逆に漂流日記をお迎えいただいたり、線の間を本と感情が行き来し始める。ケアってこういうことなんだろうか。

日が沈んでイベントが終わる頃には、僕の手書きZINEが全て売り切れた。うんうんと1ヶ月ほど悩んで熱量をぶつけたから、嬉しいな。健全な範囲内での苦悩、熱量の放出は突き詰めるほど楽しい。だし、その感覚を大切にしないと。そう思うようになった。後日改めてネットで公開したいな。どうやってやるんだろう。そのうちに。

なはさんたちとさよならした後、藤本さんと2人で魯肉飯を食べながら真面目な話をする。今日のようなイベントに、また誘われたらいいね。来年も頑張りましょう、そんな話をする。

 

翌日、藤本さんと東京都西部の立川市へ向かう。国営昭和記念公園や屋内広場「Play! Park」を視察する。子どもたちがはしゃいでいる中、多摩美術大学の学生さんが制作した映像作品を2人でずっと見ている。建築を視察しに来たはずだが。

藤本さんが大好きなロックバンド「赤い公園」の聖地に行く。赤いベンチに座り、Spotifyで曲を流しては、「あぁ......」となる。藤本さんオススメは『今更』、てきちゃんオススメは『もんだな』。ずっと座って彼女たちの曲を聴いていた。ギタリストの津野米咲さんは昨年逝去。母の言う通り、思い出すことが僕たちにできる供養なのかもしれない。

中央線に乗って御茶ノ水へ。PARK GALLERYさんで藤本さんが『裏道』を入手。中ではナカムラミサキさんの個展。回文をテーマにした絵がズラッと並んでいる。絵を観ながら2人で新しい回文を発明しようとする。やかましい客ですみません。

藤本さんと別れた後、新宿バスタでバスを待つ。人が多くて多くて、仕方なく屋外の椅子に座るが寒い。特にすることもなく、いただいたお菓子を食べながらのらりくらりと3時間ほど待っている。バスに乗って眠ろうとすると、心の底から寒気がする。3日間薬を飲まなかったせいか、理由の無い急激な不安の発作に襲われる。今までの全てが虚像のように感じる。でも、今の僕ならわかる。書いてしまえば、それは全て僕の中の実像になる。そう思ったら、まあなんとかなる気がする。日記のメモを少し書いて、眠りについた。

翌朝、藤本さんから『裏道』の書評がLINEで届いている。彼女たちの手書き文章を見て火がついたらしく、ノートに手書きで一発書き、帰りの新幹線で書いたらしい。やっぱり人間、熱だわなと感じた。