フレイバー試論

【個人的なメモです】

 

聴けば聴くほど不思議だなあと思う曲がある。marinoの『フレイバー』という曲である。


フレイバー - song by marino | Spotify


marino フレイバー - YouTube

ふわふわポップ全盛期だった頃の中田ヤスタカの楽曲提供曲で、2006年リリースなので『ポリリズム』よりも前。何がそんなに不思議かというと「Bメロとサビの歌詞が一致する」、その点である。

 

【該当する歌詞】

みんなが 君のフレイバー

素敵な このフレイバー

 

Bメロとサビの歌詞が一致するということは、その他の要素でBメロらしさ・サビらしさを演出しなくてはならない。

Bメロでは、歌声と歌声の間にコーラスを挿入することで伸びやかな印象を与える。サビでは、オープン・クローズハイハットを使い分けた、裏を強調して跳ねるようなリズムへと段階的に移行する。そういうような、メリハリ感といった様々な工夫があるのだと思う。

それでも、Bメロとサビの境目が溶けたような曲で、やっぱり不思議だなあと思う。

 

中田ヤスタカが手掛けた曲には、歌詞のパターンが一貫している曲が多い。CAPSULEなら『Eternity』、COLTEMONIKHAなら『Communication』。後者はAメロ・Bメロ・サビ、全体において同一の歌詞のパターンとなっている。コーラスやシンセのフレーズなどの足し引きで、メロらしく、サビらしくなる。


communication - song by COLTEMONIKHA | Spotify

 

それが中田ヤスタカらしさなのかと長らく思っていたのだが、最近よくよく考えると、彼が大きく影響を受けていたDaft Punkを思い出した。そもそも、フレンチ・エレクトロやダンス・ミュージックにはそういう構造の曲が多いのかもしれない。『Around the World』、『Harder, Better, Faster, Stronger』も歌詞のパターンはそれぞれほぼ同一。ライブではこの2曲を混ぜたリミックスも披露している。3分3秒の時点からスーっと緩やかに離陸するような滑らかさが非常に好きである。


Around the World / Harder, Better, Faster, Stronger - song by Daft Punk | Spotify

 

一度建てた基礎を崩して、もう一度別の基礎を建てるような曲が好きではない。基礎がちゃんと存在して、その上部で微細な足し引きが行われ、それによってサビへの推進力が発生する、やっぱりそういう曲が好きである。

しかし、『フレイバー』のような、全体が統一されているのではなくBメロとサビだけが一致する曲というのもやっぱり不思議である。他にこのような事例はあるだろうか。

 

SpotifyYoutubeをひたすら眺めて『フレイバー』型の曲を探すがなかなか巡り合わない。代わりに見つけたのはサカナクション『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』。確かにこれはAメロとサビが一致する。Aメロからサビへ直結する。ただ、この曲にはAサビとBサビのようなものがあり、一致するのはAメロとAサビ。逆に、ラスサビはBサビのみ。これはこれでまた不思議な曲である。


『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』 - song by Sakanaction | Spotify

 

もう少し違うパターンを見るならば、メロとサビの歌が同時に流れるというのもある。溶けない名前の『幽界少女異聞』やnuanceの『ハルシオン』みたいな。前者はラストでメロとサビの歌が同時に流れ、最後はサビの歌だけになる。2つから1つになると同時に、少し語尾を伸ばしたようなフレーズになることで、やっぱり離陸するような直線感が生まれているように思う。後者は、ラストでメロとサビの歌が混ざるが、そこからさらに派生せず、それでスパッと終わり。

 


幽界少女異聞 - song by 溶けない名前 | Spotify


ハルシオン - song by nuance, 佐藤嘉風 | Spotify

 

HASAMI groupの『鞍馬の小学生』のように、メロでもサビでもない歌詞が同時に流れる曲もある。初めて聴いた時に驚いたのを今でも覚えている。


HASAMI group │ 鞍馬の小学生 - YouTube

 

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの『ナイトダイビング』になってくるとさらに複雑で、ラスサビの後、Cメロとサビが混ざる。その上で今度はCメロとAメロがドッキングするのである! それでもナチュラルなシークエンスに聴こえるので、いやあ凄いなあと思う曲である。


ナイトダイビング - song by ASIAN KUNG-FU GENERATION | Spotify

 

というふうに、中田ヤスタカの曲にどハマリしていた中学生の頃に『フレイバー』に出会ってからというもの、メロとサビの壁の浸透、メロとサビの混合、そういったことを考えてばかりいて頭を悩ませているのです。