怖い光

幼い頃から、いつも有るものがふと消えたり、いつも無いものがふと現れたりすると妙に不安な気持ちになる。特に、光だと。

 

深夜に点灯を止めた信号や、スイッチを押して赤く光りだす浴室の換気扇ボタンを見ると、なんだか吸い込まれそうな感覚になる。

宅配BOXに荷物が届くとリビングのモニターが赤く光る。家に帰った時、その明滅に気づくと不吉な予感がする。

 

引っ越しのことを考えるのに少し飽きて、気分転換に街へ出る。コメダで音楽を聴きながら本を読む。アナログフィッシュの『Is It Too Late?』を聴いて、良いなと思う。

「代わり映えのしない毎日が

僕にとって最良の日だったって

今さらおもうとは」

 

じっと佇むことに対して身体がむずむずし始めて、会計を済ませて歩き出す。錦通伏見交差点に差し掛かると、なんだか物々しい雰囲気が漂っている。東西を貫く錦通の東側にバリケードと数人の警備員が並んでいる。片側3車線もある道路がきっちりと封鎖されている。事件だろうか。人通りの消えた道路の奥に、数台の車が乱雑に停められている。

聞いてみれば、どうやら映画の撮影をしているらしい。4ブロック先の錦通本町交差点まで封鎖とのこと。すぐ南の広小路通から迂回するが、各交差点の錦通側にも念入りに警備員が立っている。

これほど大規模な封鎖だ、たいそう派手なことをやっているに違いない。いきなり街にボコッと空けられた隙間の中で、想像を超えたことが行なわれている始終を、こっそり陰から覗き込んでしまった時、やっぱり不安になるのだろうか。

 

昔、学校から家に帰る途中、並んだ街灯のポールに1つ1つ照明をくくりつけている人々に出くわした。傍に看板が立っており、読んでみると夜に映画の撮影をするらしい。夜にその場所へ戻ってみると、いつもよりも遥かにきらめいた橙色が眩しくも美しく見えた。遠くの方に俳優さんがいらっしゃるのはわかるけれども、さすがに顔の詳細までは見えない。ただ、有名な監督が偶然現れて僕にニッコリと笑ったので、驚きながら頭を下げたのは覚えている。あの時の光がそれほど怖くなかったのは確かだと思う。

 


Is It Too Late? - song by Analogfish | Spotify