絶望書庫

創元SF文庫の『SFマンガ傑作選』を読む。文庫サイズで600ページ、とても分厚い。手塚治虫石ノ森章太郎諸星大二郎、名だたる漫画家たちの作品が収められている。その中でも、佐々木淳子の『リディアの住む時に…』、佐藤史生の『金星樹』の2作に心奪われる。解説を見れば、どちらも1978年に発表された少女漫画だった。題材はタイムパラドックス及びウラシマ効果。これほど美しいSFを、少女たちがコミック誌で読んでいたと思うと羨ましくて羨ましくて仕方がない。よし、70〜80年代のSF少女漫画を蒐集して読むぞと思い始める。

 

21時頃、なんだか急に眠たくなって布団に入る。漠然とした不安というよりも恐怖のようなものに、身体が包まれているような感じがして、寒気がする。ただ単に、かなり久々だなあと思うだけ。それなりに慣れっこになってしまって、もう鈍感になってしまっている。

親友に電話して、寒気が止まって、ぐーぐー眠る。朝になれば、恐怖なんてものはさっぱり消える。微細な揺れが、心にはやっぱりある。

 

7時には起きていたのに、ここ最近はうっかり8時頃まで眠ってしまう。部屋を掃除して、ニール・スティーヴンスンの『スノウ・クラッシュ』を読む。とにもかくにも表紙がかっこいい。最初にメタバースの概念を打ち出したSF小説だと知り、読みたくなって先日丸善でお迎えしてきた。この物語の世界では、特権階級であるピザの配達員にはエスプリが求められ、街にはピザ大学だってあるらしい。ピザ食べてえなあとニヤニヤしながら読む。

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時間ギリギリまで本を読んで、心療内科に行く。この先生の顔を見るのもあと1回と思うと、感慨深いような気がしたが別にそうでもなかった。大阪の心療内科に渡す紹介状を受け取る。

帰り道、マクドナルドが待ち構えている。ピザが無ければマクドを食べればいいじゃない。それでも見事ビッグマックの誘惑に耐えて、そば屋で月見そばを食べる。思いのほか腹持ちがよく、時代は月見そばかもしれないと思う。舞茸天もトッピングしちゃったのは、ここだけの内緒である。

 

家に帰って昼寝をしているとインターホンが鳴る。パジャマのまま、だらんとした目で玄関へ出ると、引っ越し業者さんが梱包資材を届けてくれた。あまりにマジシャンコンビのナポレオンズパルト小石さんに似ていたので、一瞬夢かと疑ったがさすがに夢ではなかった。

どのくらい家財があるのか見せてほしいと言うので、小石さんをリビングに招くとあまりの本の多さに絶句している。配達した段ボールだけでは絶対に入らないと言う。予め本が500冊ほどありますとは伝えていたが、どうも一人暮らしとは思えないのっぴきならない物量らしい。

足りない時は段ボールを追加注文してくださいねと言い残して小石さんは去っていった。お得意のマジックで家財を新居へ転送してほしかった。

 

書籍用に使う段ボールは全部で10箱。底にテープで十字を作り、本を詰め込んでみる。床に積まれた本のタワーを崩し、ハタキで埃を除いて箱へ詰めていく。最近読んだちくま文庫の『書痴まんが』の表紙を思い出す。諸星大二郎栞と紙魚子シリーズ』の紙魚子さんが、ハタキを持って古本屋の店番をしている絵。

箱に詰める本、誰かにあげる本、引っ越し前に読みたい本と選別していく。5箱使って床のタワーは全て崩したが、机の上やカラーボックス、そして肝心の本丸である大きな本棚を前に攻めあぐねている。残り5箱、どう考えても無理無理無理のかたつむりである。ぽいっと身体を宙に浮かせ、ベッドでゴロンと大の字になり、そのうちそのうちと言い聞かせて『スノウ・クラッシュ』に手を伸ばす。