脱ゴロゴロ生活、春の陣

社員証を失くしたと思っていたのだが、あれはどうもタイムカードという名であるらしい。休職している間に混同してしまっていた。急いで総務の方に訂正とお詫びの連絡を送る。こんな調子で本当に復職できるのか、さすがに不安になってくる。

 

掃除と梱包を繰り返すせわしない日々を送る。ここにも、あそこにも、知らないうちに埃が溜まっている。なぜ掃除しなかったのかと後悔しながら掃除機にモップ、雑巾がけ。部屋の隅は綿棒で。トイレも洗面台もキッチンも、家財を整理しては綺麗にしていく。どれほど掃除すれば許されるのかわからないので、丁寧に頑張ってみる。

家の鍵を返しに母が名古屋へやってきた。僕の部屋を見て開口一番「掃除、十分じゃないの」と言い、ひつまぶしを食べて名古屋城を観光してお土産を買って、あっという間に大阪へ帰っていった。もう少し掃除するように言われるかなと思っていたので拍子抜けする。ただ、必要とされる綺麗具合のハードルが格段に低くなったので、執拗だったモップさばきが以降かなり雑になった。

それからもそれなりにせっせとこなし、衣服や日用品も段ボールに詰め込んで、家の中はほとんど片付いた。段ボールに入っていないのは延長コードとその周辺の充電コード、手元に残しておいた数冊の本ぐらいか。

 

このようなバカみたいに忙しい時期に、英語の勉強を始めてしまった。というのも、以前から読み進めていた小説『スノウ・クラッシュ』にとある描写があり、それを読んで口をあんぐりとさせてしまったのである。メタバース(仮想空間)の中でスーツを着た日本人が欧米人と商談をしているのだが、同時通訳機能を用いると言葉のニュアンスがそぎ落とされてしまい、何を言っているのかさっぱりわからないというのである。言葉よりも顔の表情の方が信頼できるという。それはなんだか嫌だなあと思う。

VOICEROIDみたいな感じで僕の声に近い音声で翻訳文が出力できたら良いけれど、片言の機械音声で出力されるのは味気ない。こうなると、機械翻訳技術・音声合成技術の驚異的発展に賭けるか、それなりに英語が話せるようになっておくかの2択となる。後者を選択して、じじいになった僕がペラペラ話せる方が人生楽しそうな気はする。

 

もう1つの理由がある。今まであまり洋楽を聴かなかった僕が音楽ジャンル"hyperpop"にどハマりしてしまい、洋楽を聴くようになった。このような音楽はインターネットを舞台に展開されているが故に、有機的に凄まじい速度で移ろいゆくらしい。ユリイカの4月号特集テーマがhyperpopだったので買ってきたのだが、やはりインターネットで情報を得たいなと感じる。そう思ってTwitterのアカウントを新たに作成し、海外のアーティストをじゃんじゃんフォローしていく。たくさんのアーティストが短い音源をツイートに貼り付けて新曲の宣伝をしているので、これを基にして効率的に良い曲をディグることができる。

しかしながら、画面に映し出されたタイムラインが英文で埋まる。リーディングが比較的得意な僕も、情報量の多い文章がドカッと流れるとさすがに頭から湯気が出る。スラングがかなり多く、翻訳ソフトに放り込んでも解読できないことが多い。現在のSNSですらなんのこっちゃわからないのに、交流の場がメタバースになってしまうとコミュニケーションがもっと加速して絶対についていけなくなる。音楽にどハマりするために英語を鍛えないといけない、まさかの事態に突入しているらしい。

 

という訳で、参考書を3冊買ってひたすら音読をぶん回し、ちまちまと勉強している。TOEICのような資格受験はとりあえず放置、とにもかくにも今は基礎力。明日も音読、明後日も音読、参考書を両手で握ってひたすら素振り。この3冊は段ボールに入れずに、リュックに入れて大阪に持って帰る予定。先月発売されたオタク女性ユニット「劇団雌猫」監修の『世界が広がる 推し活英語』(学研プラス)も気になるが、それは3冊を完璧にしてから。本が増えれば増えるほど挫折するもんだこういうのは。