本丸

引っ越しから数日、作業や買い物もやっと落ち着いてきた。朝起きてラジオ体操をして身体をほぐしたら、この街で蔵書数の多い図書館へ自転車をこぐ。しかし、今日は4月にしては暑い夏日。しばらく自転車をこぐと背中が湿っぽくなり、都心のコメダに入って涼む。モーニングを頼むが、この店はトーストに載せるたまごペーストの粒子が大きい。名古屋の行きつけだったあの店が恋しくなる。

図書館でカードを入手し、読みたかった美術の本を2冊借りる。えんやこらと汗をかきながら家路につく。大阪の街路は縦縦横横の交差点だらけ、自転車に乗っても全然スピードが出ない。

汗でびしょびしょなので冷たいシャワーを浴びる。着替えてベッドに寝転がる。首元にはアイスノン、おでこの上には保冷剤。寝そべって会社のパソコンでメールを打ち返す。本日夕方、会社に行って住民票を提出する予定。復職する前に会社に顔を出そうと思ってはいた。

 

これから直属の上司となる方から漂流日記を読みたいので持ってきてほしいとメールが届く。少し悩む。そりゃ予め晒け出したほうがいいのであるが、それでもやっぱり今でもあの日記の序盤は凄まじく暗いと思うし少々気が引ける。しかし、あの1冊を読めば病気と休職中のできごとについて一発で把握できるのも事実である。結局、日記を袋にくるんでリュックに詰める。後は野となれ山となれ。

 

お世話になった部署、これからお世話になる部署へお菓子を持っていこうと思ったのだが、グーグー昼寝をしてしまいお菓子を買いに行けず。Tシャツ姿からフォルムチェンジ、電車で会社へ向かうけれどもさすがに緊張する。1年半ぶりだし、ずっと名古屋にいたもんだから大阪の部署の雰囲気をよく知らない。頑張って足を前に進めるが、石のようにこわばっている。肩周りも緊張でかなり固い。しかし、ここで引き下がっては何も始まらない、ガシンガシンと進む。

 

エントランスで社員証を提示、エレベーターに乗る。扉が開いて、知らない方がいたらどう挨拶したものか。やはり緊張する。足が震える。

ウィーンと扉が開いて足を踏み出せば、目の前には部署の先輩が1人。今までの緊張を返してと言わんばかりの安心感。「良かったぁ!!」と叫びながらへにゃへにゃに倒れそうだった。本当に、本当に良かった。

お世話になった部署の皆様にご挨拶する。安心しきってめちゃめちゃ喋る。お菓子は今度持っていこう。そうそう、これから直属の上司となる方に漂流日記をお渡しする。病気のポイントについて、思いつく限りお伝えする。けど、そこまで心配しなくてもきっと大丈夫なんだよ。窮地に陥った時に突如現れる頭の回転の速い僕と、上司が話し合いながら策を巡らすに違いないもの。それを信じずに、人間を信じすに何を信じろというのだ。

 

5月2日の月曜日に初出社の予定だったが、みんなその日に有給休暇を取得して社内はスッカラカンのため、GW明けから出社することになった。という訳で、僕のゴロゴロデイズは少し延びることになった。今のうちに本をドカドカ読み進めたいな。最近読んでいるのはデビッド・ブラットナーの『πの神秘』(アーティストハウス)。円周率を15桁まで特定するために、昔の人は1億以上の辺を有した正多角形をイメージしたんだって。まだまだ知らない不思議なことが、不思議で面白いと思えることが、ここもかしこも眠っているように感じる。