課外授業

名古屋時代は狭い自分のデスクで作業することを嫌っていた。真ん中の共用テーブルにクロッキー帳と資料を広げて没頭する。そんなスタイルだった。

ところが、今僕がいるフロアはぎゅうぎゅう詰めで共用テーブルが非常に少ない。これはどうしたものか。上司に相談したところ、1階のカフェスペースで働いてもいいと許可が下りる。クロッキー帳やペンなどを抱えて1階へ。広げて、俯瞰して、頭を左右にゆらゆらと振れば、もう見えてしまう。浮かんだもの全てを実行するのは無理がある。だから、優先順位をつけて今差し迫ったものだけやる。休職前はこれをおろそかにしていたのかもしれない。安全運転を腕に染み込ませる。

木曜日は上司と街に出る。商店街や路地裏や再開発エリアを縦横無尽に歩き回る。居心地良さそうな空間を見つけては椅子に座っていく。

「でゃーっ......!」

そう言いながら2人、椅子やクッションに沈み込んで起き上がれなくなる。

金曜日もデスクでニコニコしながら考えて、つらつらとペンを走らせて終業。厳しい上司と前情報でいろんな方から聞いていたのでビビっていたが、3週間休まず働くことができた。病み上がりということもあって手加減なさっていることもあるけれど、こっちから主体的に動けば意外と上手くいくことがわかった。要は、考えた上で繰り出すボケは全部ツッコんでくださる方であるらしい。厳しいのだろうけど、それ以前に優しい。ただ、今後客先で打ち合わせをするような時に、僕のあわあわアガリ症が飛び出したりすると、なんて考えると少し億劫になりますわなあ。なんて浮かぶようなことを「杞憂!」と叫びながら脳内で斬って眠る。起きれば週末。

土曜日の朝、電車を乗り継いで近鉄けいはんな線学研奈良登美ヶ丘駅。そこからバスに乗り継いで京都府精華町国会図書館関西館。

僕はなかなかに奇怪な名字をしている(自称的山)。親戚以外で同じ名字の人間を見たことがない。あまりに奇怪なのでルーツが気になっていた。関連しそうな文献を図書館の書庫から掘り起こして読んでいく。大事なページは複写依頼。読んでみると、祖父の墓と同じ家紋が掲載されている。僕は分家に違いないけれど、一族の核心に迫っていくのはなんともワクワクする。一族の発祥地がどこなのかを知ることができた。僕は一体何者なのか、連綿と続く歴史の中でそれが位置づけられ、安心感を覚えながら生駒の山を下っていく。

今日の朝、目覚めてLINEを開くと両親が家に来るらしい。ORANGE RANGEの『ラヴ・パレード』かと思いながら掃除を急ピッチで進める。彼女ではなく両親が来る。レトルトカレーなどの救援物資を持って現れた両親が、家につくなりゴロゴロしている。母曰く、この部屋は暑いらしい。今年はラニーニャ現象で酷暑らしいから熱中症が怖いようだ。夕方、近所のホームセンターでサーキュレーターを買う。家に帰って組み立てて電源をつけると、京都盆地のような気候が軽井沢になった気がする。気がするだけ。でも、空気がかき混ぜられて均一になったような違いを肌から感じる。あるとないでは大違い。明日から復職4週目、肩の力を抜いて頑張りましょう。