てきちゃん散々日記

月曜の朝、玄関を出て会社に向かう。朝っぱらからやけに暑く、頭の上からゆらゆらと湯気立つような感じがする。コンビニで昼食を買い、タイムカードを切ってデスクに座る。

頭がぼーっとして何も考えられなくなっている。熱中症かな、夏バテかな。休職直前の頃を思い出す。なんだかまずい気がしてくる。

今日はもうこのまま帰ってしまおうか。しかし、朝にパパっとやっておきたいことがある。それだけは午前10時までやって、終わったらタクシー呼んで帰ってしまおう。そう思いながら必死にデスクにしがみついていれば、いつの間にか午前10時になっている。症状は和らいでいたので、そのまま定時まで仕事する。

 

火曜の夕方、上司とミーティングをする。しかし、会議室のエアコンが付いておらず、ムンとした熱気。電源を付けるが、冷えるまでには時間がかかる。

頭がぼーっとして何も考えられなくなっていく。真っ白になっていく。上司が何を言っているのかも正直わからない。難しいことを考えられない。簡単なことも考えられない。これが噂に聞くブレインフォグか、いいや違うか。困ったなと思う。

ミーティングが終わって上司に1つ打ち明ける。実を言うと、耳が聴こえていないことが昔からよくある。厳密に説明すると、音は聴こえているのだが、言葉・意味として捉えることができない。話し声と雑音を取捨選択する機能がどうも弱い。それは会議や飲み会で顕著になる。会議の議事録がろくに書けないので、会議前は穴が開くほど資料を読み、会議後はひたすら録音を聴いて少しずつ議事録を書く。それがある種の完璧主義・強迫観念を生み出しているような気もするが。飲み会では適当に頷いているだけである。こういうのを聴覚情報処理障害(APD)と言うらしいが、医学的に究明されてないことも多いため、医者にかかることもなく僕は長らく放置してきた。親にも伝えたことがない。が、先週の会議では皆が何を言ってるのかさっぱりわからなくなってしまい、それはちょっと困るのでさすがに上司に伝える。耳鼻科に行ってこいということになる、そりゃそうだ。ただ、「皆でサポートするから、1人で抱え込まないように」と仰ったのが救いである。ただ、熱中症か夏バテかブレインフォグかよくわからない、僕の抱える揺らめきについて伝える時間を逃してしまった。

家に帰って、APDについて調べる気になる。患者の半数以上がADHDとする円グラフを見て、画面をスクロールする手が止まる。ADHDは「不注意」と「多動・衝動性」を主な特徴とする発達障害の概念の一つらしい。詳しくないけど、見覚えはある。

現在心療内科に月一回通っているが、その度に5択アンケートのような検査を診察前に何種類も受ける。それの結果を見ると、毎回ADHDの項目が「中等症」となっている。アンケート結果については診察中に説明しますと言われるが、説明されたことはない。心療内科、変えちゃおうかな。それはともかく、ただこれはもう、そういう筋書きなのではないか。

例えば、誰かが僕に話しかけたとして、それが聴き取れない。独り言なのか僕への言葉かわからない。反応に困ってうろたえる。それを見て困ったような顔をしながら僕に話す、また聞こえなくて僕はうろたえる。生活の中でこのパターンに出くわすことがなんと多いことか!

耳鼻科と心療内科に行ってみなければ実のところわからないが、こりゃ大変なことなのかもしれないという気になる。実生活の工夫でどこまで改善できるだろうか、さすがに不安になってくる。がんじがらめになっていく。

 

水曜早朝、ベッドから起き上がると頭の上から蒸気が揺らめいている。社用スマホをテーブルから掴み上げ、休暇のメールを入れる。くらくらするし、胃腸の調子がかなり悪い。やはり夏バテだろうか。毎日うな重を食べなきゃ俺は働けない。

僕が復職した直後の頃、上司は「毎日元気に出社したら150点」と仰っていた。大学の講義の出席点を思い浮かべ、今日は初めて休むから147点かな。150点じゃないとだめなんだよそこは。

ベッドに転がって、先日まがり書房さんで購入した関川夏央谷口ジローの『『坊っちゃん』の時代』全5巻を読む。近現代史マンガがマイブームになっている。日本史を学び直したいなと思う。思い続けて、行動には移せていない。

時間が経つにつれ、段々と暗鬱な気持ちになっていく。池田晶子『14歳からの哲学』、セネカ『生の短さについて』を音読する。落ち込んでいるときはよく声に出して読む。音読すると暗いことを考える暇がなくなり、曇り空に一瞬の晴れ間が差すような心地になる。

 

Sugarless GiRL (extended version) / CAPSULE

(4:47〜)

「灰色の雲と雲の間に

 わずかに差し込む光はミュージック

 なにもかもうまくいきそうな

 気がするほどじゃない

 けど」

 

そんな感じ(通常版には「けど」という歌詞は無い)。何もかも上手くいきそうな気がするほどじゃないけど、それでも。


Sugarless GiRL (Extended Ver.) / capsule - YouTube

 

今日、木曜の朝。心は晴れ渡っているのに、身体がついていけない。社用スマホでメールを打つ。また暗くなっていく。こんな毎日で仕事なんかできるのだろうか、不安定で塞ぎ込んだ精神は変わらずに、それどころか増大していく。6日分しかない今年度の有給休暇を、もう2日消費してしまった。やけっぱちになっている。

摂取した水分を吐き出してしまう。先日夢中でページをめくったあのマンガの、胃痛に苦しむ漱石のように僕もぐったりしてしまう。

昼、なんだか身体が熱く感じて体温を測ると37.8℃。すぐ上司にPCR検査を受けてきますと連絡し、近くの病院に電話して、駆けていく。

 

結果は陰性。

診断はウイルス性胃腸炎

医師曰く、胃腸炎が最近流行しており、正直なところコロナよりもしんどいらしい。ヤバイものを食べた記憶は僕には無し。雑に作った半熟ふわふわ納豆オムレツ以外。

 

家に帰ってエアコンをつけるが、次第に悪寒が僕を襲う。エアコンを切るが、今度は熱中症が怖くなって再度エアコンを付ける。ウィダーインゼリーで薬を流し込む。このまま僕は、痩せてイケメンになるのであろうか。イケメンになって、うな重を食いたい。イケメンにならなくても、うな重を食いてえんだよ俺は......