心をすり替えられた人

てきちゃん、28歳になる。特に、何も起こらず。おそらく来年からいろいろと焦り出す。

 

朝夜のストレッチをほぼ欠かさず行い、首・肩のコリがかなりほぐれてきた。各部分の可動域の変化に気づいては驚く。息を吸うにも以前のような重苦しさは無く、ハッカのような爽やかさがある。心地が良い。そうして、僕の生命を追い込んだ躁鬱はすっかり遠くの向こうへ消えていったのでした。

 

めでたしめでたし。

 

で終わらない。

目を離した隙に躁鬱がどこかに消えて、ここに残った人格は果たして誰だろうか。のんきで、その癖に不安を抱え、びっくりするほど仕事の作法を忘れている。打たれ強くなったのはいいが、あまりにのほほんとしている。緊張感は無いが、かといってアドリブに弱い。黒と白を眠りにつかせた結果、無邪気で幼い、平々凡々な28歳が生まれてしまった。

この人物がスタート地点らしい。テキパキした躁や物静かな鬱が消えて、弱々しい根っこだけが残ってしまった。働けるのかねえ、不安だ。不安だが、そこまで切羽詰まった感じも無い。なんなんだろうか、よくわからない。僕にわからなければ、きっと誰にもわからない。5月の僕と異なる人間が、誰にも知られることなくデスクに座っている。外面だけ同じで、中身がすり替えられている。

こればかりはさすがに、面倒だなと思ってしまう。積み上げられた盆明けのヘビーそうなタスクに蓋をして、明日働いたその先の夏季休暇だけを見つめている。薄いガラス板の向こうにキラキラと輝く海が見えている。